ピンクの髪や、ハットにオーバーオール。カラフルな3人が、時たまつつき合い、笑い声をあげながら肩を並べ、カメラを見つめて息をそろえた。「スリーフラッグスです!」
ブローハン聡さん(30)、山本昌子さん(29)、西坂來人(らいと)さん(37)。児童養護施設で暮らした経験がある3人組「THE THREE FLAGS(スリーフラッグス)―希望の狼煙(のろし)―」(スリフラ)だ。
「ここにいる」という意味を込めて、3本の旗という名前をつけた。家族からの虐待などで、施設や里親家庭にいる子ども、そこを巣立った若者、家庭の中で居場所がない子どもについて知ってほしいと、2019年からYouTubeで番組を配信している。「子どもだけでできることは少ない。だから大人に知ってほしい」と口をそろえる3人に、思いを聞きました。
記事後半には、さらに詳しいインタビュー動画も。
ポジティブに発信したい
――それぞれのメンバーについて教えてください。
山本さん(まこちゃん) 西坂さん(ライト)はお兄さん的存在。福祉のテーマは真面目や暗いイメージを持たれることも多いけど、動画がかっこいいって言ってもらえるのはライトさんの制作のおかげです。
ブローハンさん(ブロ) まこちゃんはおてんばです(笑)。その勢いがすごいチームを引っ張ってくれて、全国につながりがあるのも強いです。
ライト ブロは、自分が虐待を受けた経験をふまえて、発信する言葉が素晴らしい。後輩たちが「ブロ、ブロ」と相談しているのをみると、本当に素敵だと思います。
――3人で発信活動を始めたのはなぜですか。
まこちゃん 施設などの社会的養護を経験した若者たちの集まりの中でつながりました。暗く悲しい感じではなく、ポジティブに発信していきたいという気持ちが共通していました。
ライト 施設内の虐待や、児童相談所や一時保護所のひどい対応などへの批判も大切ですが、やるからには「子どものためにこんなに一生懸命がんばっている人もいる」「一緒に課題を考えていこう」と発信したいと思いました。これまでの様々な人の発信の積み重ねがあり、僕たちの世代がようやくそうした発信ができていると思います。
ブロ 試しに1カ月だけやってみようかと話していたのですが、当時やりたいことを洗い出したものが、いまだに全部消化できていません。
大人もSOSを
――スリフラの番組の目的には「保護されるべき状況にもかかわらず、社会的養護につながらなかった方々」についても知ってほしいと書いています。
ライト 僕たちは幸運なことに、社会的養護という枠組みで保護されました。それでも、そもそも児童相談所につながらない子どもたちもたくさんいる。どうしても一部の子どもの話でしょと思われがちですが、ニュースで目にする虐待は、積み上がった子育ての問題のほんの一部です。そこに至るまで、親も子どももたくさんのストレスを抱えているし、子どもや子育てのことについて真剣に考えてほしいです。
ブロ 社会的養護とそうではないもの、と区別するのは少し違うと思います。僕らは施設出身者として発信しているけれど、行き着くのは、親になる前にひとりの人が大人になる段階から、どう変えていくのかということ。虐待はひとりの人が大人になり、家庭をつくる中で起きます。子どもを守るためには、苦しんでいる大人がいたら大人同士も助け合わなければいけないんです。
まこちゃん 大人も自分が傷ついていることを知って、恥ずかしいことだと思わずに、自分も世の中もその傷を受け入れていくこと、つらいときにはSOSを出すことが大事だと思っています。傷を傷じゃないかのように生きることで、子どもに連鎖していくのはすごく悲しいことです。
ライト そのしわ寄せが、子どもに行ってしまっています。
あとひとり、あとひとり、と相談して
――皆さん自身が、向き合い切れなかった思いを抱えてきました。
ブロ 10代の頃、虐待で命…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル